癌について、医療分野の視点から多角的に論考しながらストーリーが展開する。死の周辺をていねいになぞった物語世界は、読み応えがある。そこにオカルト分野が進入してきて、毛色を変えながら更におもしろさを増していく。
だが、本書は面白いが、エンターテイメントではない。作者は、世界や命のあり方について、その本質を知りたいという渇望に突き動かされて書いているのだ。その切り口が、今回は癌だったということだ。
終盤、長広舌気味に世界の有り様を単純化してわかったように記述した部分だけ、やや傲慢な感じがした。だが、総じて面白く、深く、沈鬱で、ふっきれている。読んで良かった。田口ランディは、小説家として円熟期を迎えつつある。
面白かった。揺さぶられた。考えさせられた。唸った。そして痺れた。おすすめ度
★★★★★
ランディ姉さんの小説は、コンセントからずっと読んできましたが、
この「キュア」が最高傑作だと思います。
面白かった。揺さぶられた。考えさせられた。唸った。そして痺れた。
主に通勤時、横浜線の中で読んだのですが、いつもより余計に グウァン・グワン電車が揺れていました。
作家の気迫。悲しいまでに本気でこのテーマと向き合って、それは、何か
こう、つまり、どうして、そこまで、まるで、、、 まるでこのお話の主人公や白川まな子のよう。
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死生観を伴うエンターテイメントと医療おすすめ度
★★★★☆
田口さんの小説を面白いとか、好きとか単純には言えないのですが、皮膚感覚の表現が上手い作家さんだと思います(セクシャルな描写や、粘膜的な描写や、精神錯乱の描写も、ワカラナイけれど、肯かせます)。で、だからこそ、そこにオカルト的なモノが入ってきても一定のリアリティや説得力を私は感じました。つまり、その部分に説得力を感じない方にはあまりオススメできません。
少し変わった感覚の持ち主で、外科医の斐川がガン患者として、今までと正反対の立場に置かれることで「治療=キュア」とは何か?医療とは?患者の立場に立つとは?生と死についても考えていかなければならないことになっていく葛藤が、エンターテイメントとしても、上手く描かれています。エンターテイメント性も考慮していますから(小説ですから、フィクションですから)、オカルト的なものも、小説の、エンターテイメント性の道具として、またその描写や考え方の面白さとして、纏められています。現実にオカルト的なモノを認める事はあまりありませんけれど、小説の道具として納得させられる上手さを持ち、説得力があるならば(あまりに都合が良いとイヤでも気になり小説に入り込まなくなりますから)私はオカルトを否定しません。そういう意味で上手いと思いました。そのエンターテイメント性が、ガンを取り巻く理不尽なまでの悲しさや苦しみを受け入れやすく、読ませやすくする効果も生んでいると思います。ガンになった患者のキツイ考えや受け取りを、真剣さだけでなく、伝えやすくしています。また、西洋と東洋の対比、合理と運命的、輪廻的なものとの対比など、2項の単純比較だけでない積み重ねが、私には良かったです。
ですが、死生観として何か目新しいものがあったか?と問われると、そこまでのものでは無いかな、と感じました。哲学的死生観や医療モノを少しでも考えた事のある方ならば1度は考えたものであると私は思います。エピローグももう少しカタストロフィがあって良かったと思います。
医療関係に興味がある方に、または生や死について考えてみたい方にオススメ致します。
冷徹な死生観おすすめ度
★★★★★
田口ランディさんの作品は初めて読みました。がん治療の現代医学での問題点、代替療法についてかなりのスタディをされたことがわかります。主人公がどういう結末を迎えるのか、最後のページまで引きつけられる構成でした。人は自分の人生の最後をどのように締めくくるのか、人間も一個の生物として、あるがままの命の姿をここに登場する人物たちほど冷徹に受け止められる人間はごく少数だと思います。自分の生を考える上で参考になりました。
また、スピリッチュアルな読み物と言ってもいいくらいに霊的な話がちりばめられており、作者ももしかして霊能者なの?と人となりに興味を持ちました。確かイギリス人の血を引く作者のスピリチュアルな世界が色濃いイギリスでの生活歴がこのような世界を描かせるのでしょうか。そういう意味でも興味深い読み物でした。
生とは、死とは、真の医療とは、を問う力作おすすめ度
★★★★★
人々の意識に同調、調整したり、波動を感じたりする特殊な能力を無自覚に持つ医師、斐川。辣腕の外科医として様々な癌を切除し、過酷なスケジュールをこなして行くうちに、自らも末期癌に侵されていることを知る。「医師」から「患者」へと立場・視点が変わったことにより気付く医師、病院、現代医療の歪み。「助ける」ことが必ずしもベストではないのではないか、と考えるに至った彼は、過去に出会った患者との再会や似た能力を持つ看護士との交流を経て、やがて西洋医学以外の道を模索し始める。
本書は現代西洋医学に含まれる矛盾、歪み、影の部分にスポットを当てる。エンターテイメントとしてもよくまとまっており、今後の医療のあるべき姿を問う力作となっている。
出来は非常に良いです。
おすすめ度 ★★★★★
全般的に言うと初心者向けだと思います
。TOP100ランキングに入っているのでご存知の方も多いと思いますが、
ホント満点を付けても良い出来です。